日の名残り
このブログを開設しようと決めたきっかけの本が「日の名残り」である。今まで読んだ中でダントツで面白くこの衝撃をどこかに残したあと思ってブログを開設した。
もちろんこの本を手に取ったきっかけは「日の名残り」がノーベル賞文学賞を受賞したからである。ミーハーな私は、受賞翌日の朝、「カズオ・イシグロ」の「日の名残り」を借りようと急いで学校の図書館へ駆け込んだが時すでに遅し。もう何者かに借りられていたのだ。さらに同著の他の本も全て本棚から消えているのだ。
結局この本を借りられたのはノーベル賞文学賞を受賞して3カ月ほど経った頃だろうか。本棚で欲しい本を見つける"あの瞬間"は何にも変えがたい。
余談はさておき…
このブログを開設して、一番最初に備忘録に残すのは何度も申し上げたように「日の名残り」である。
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 17人 クリック: 190回
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なお、下記に記載するあらすじは私が書いたものなので適切に話を表せていないことを前提に読んで欲しい。
主人公の名はスティーブンス。イギリス人執事であり、英国内屈指の宮殿であるダーリントン・ホールで働く。
アメリカ人の実業家ファラディに仕え、休息をとってイギリス国内をひとり旅するように提案された。
促されたとおりスティーブンスは7日間の旅に出ることとなった。
緻密な行動計画を縫ったが、思いがけないハプニングや人情味の溢れる人々と出会いがあり、予定通りに事が進んだとは言い切れないが有意義な時間を過ごした。
そんな旅の途中で以前仕えていたダーリントン卿の記憶が思い出される。
ひとり旅には休息をとる以外にもう一つの目的がありそれも遂行しようと試みたが…
とあらすじを書いてみたが実際の本の雰囲気と大きく異なっている。私が書いたこのあらすじを読む限り、"もう一つの目的"というのが際立ち、スリリングな話もあるのではないか、ということを思ってしまう。
しかし実際はそのような話でなく、イギリスの田園風景が思い浮かぶような温かみのある話があるので誤解しないでいただきたい。
となると「オチはどこか?面白いポイントはどこなの?」なんて考える人がいるかもしれない。しかしそれは私もわからない。無責任かもしれないが、私はそう感じた。
どこが面白いか具体的に挙げることは出来ないが、次のページをめくりたくなってしまうのである。この先はどうなるのかという好奇心が私の指を動かす。目を動かすのだ。
緻密に描かれた人間関係が止まる事なく変化し続ける。それが面白いのだろうか。
話は変わる。
この本は一貫して主人公であるスティーブンスの視点で書かれている。例えるならば日記というべきだろうか。
しかし1人称で書かれているのに関わらず、俯瞰的な視点で書かれているのである。主人公の感情を排除した冷静な視点で書かれているのだ。
おそらく主人公の職業である執事に依存しているのだろう。雇主を分析し、それをもとに生活のサポートをする。そのためには冷静な視点で物事を捉える事が必要である。
1人称なのに事実の話か、感情を含んだ話かが前後の文脈で分かるのはすごいと改めて思う。
そしてこの本を読んで一番強く感じたのは読みやすいという事だ。たしかに1920〜1930年代頃の話であり、ノンフィクションの話だが登場人物は若い人には通じないような昔の人だ。そういった面から見ると読みづらいと感じるかもしれない。
しかし、新たな人物が出てくると逐一に説明してくれる。また、繰り返し登場する人物も少ないので(1回しか名前の出ないような人が多い)あとで「この人誰だっけ」という手間を省く事ができる。
土屋さんの訳のおかげもあり、比較的簡単な日本語で書かれているため、読んでいた最中に気がそれることもない。
文庫本としても決して厚いわけでもないだろう。小中学生でもおそらく読むことがきっとできるであろう。
これほどまでに先が気になる本はそうそう出会えないだそう。これだけ面白い本に出会えるきっかけを作ってくれたノーベル文学賞には感謝しきれない。
皆さんも是非読んでみてはいかがですか?
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
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